サラは,自分の値打ちと自分のしている仕事の価値とを同等に解釈することで,当時の社会のさもしい考えに屈服したのだった.高慢の度がすぎた彼女は,「より低い」地位の人間をとげとげしく批判した.これは彼女の魂にとってじつに不利なことであり,自分にも周囲の人々にも多大な不幸と不快をもたらした.要するに,彼女は霊的に卑小となり,みずからの成長を遅らせることになってしまったのである.これは現世でも,最終的に彼女が戻っていった魂の世界でも,明らかなことだった.
この現象は英国の奉公人の階級だけに限らず,きわめて一般的な病弊のひとつである.あなたがたはそれを競争と呼んでおり,まともな人間に競争心は不可欠だと考えている.このような価値観は個々の人間からひいては学校や会社,国家といった大きな人の集まり全体に蔓延していく.やがてはこれが大きな形をとるようになって,一般に徳と信じられている強烈なナショナリズムな愛国心となり,戦争を生み出すのだ.だがそれは世間に横行する「自分は他人より上だ」という同じ悪しき信念を偽装したものにすぎない.
われわれはこのような態度にまったくうんざりしている.魂の領域に住むわれわれには,地上世界の不変の真理を見通すことができる.そしてあなたがたに,競争をめぐるこの考えがいかにばかげているかを,はっきり理解できるようになってほしいと願っている.どれだけ多くの人間が,この考えのために身をほろぼしたことか!その根底にある論理とは,富や食糧や愛情が全体にいきわたるほど十分ではないので,自分の分を確保して安心するために互いに戦う必要がある,というものだが,これはまったくの間違いだ.ごく基本的には,競争心は宗教的な方向感覚の弱さ,すなわち信仰や高尚な目的の欠如の表れなのだ.人間の精神構造の低さがゆえに競争心が生じるのである.
ラドン『輪廻を超えて』 pp. 151-2.
サラとは20世紀初頭,英国に生きた女性で,ある屋敷で召使として勤め,コックの地位にまで昇りつめた優秀な女性でした.
人より優位に立ちたい,(主に肩書きや仕事の面で)尊敬されたい,といった動機は別の言葉で言えば,野心,つまり「名誉欲」です.名誉欲に駆り立てられてするのでは,どれほど努力しても「本当の意味で」優れた仕事はできません.それはどの分野でも同じです.自分を駆り立てる「真の」動機が何であるか,冷静に客観的に見つめることが必要です.
最後に述べられているのは,霊性が低い(たましいが幼い)人ほど,人と競争したがるものだ,ということでしょう.
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