ところで,"enough"という単語は中学校で教わるが,その意味が日本人の学生には正しく理解されにくい表現のひとつである.英和辞典には,よく「十分な」という訳がついているが,正しくは「何かをするに足りる程度の」という意味で用いられることが多く,本来の目的には必ずしも「充分」ではない,という含みがある.例えば,I have enough money to buy a woolen sweater. と言えば,ウールのセーターを1枚買えるお金はあるが,例えば,高級なカシミアセーターを買えるほどの余裕はない,という意味合いになる.私がまずひっかかったのは,"good enough" であって,"very good"ではない点だった.さらに,「何が」 good なのかも不明だった.
メッセージがリーディングに関することだ,とひらめいたのは,つい最近のこと.私はミディアムになるべく,都内某所で昨年7月まで訓練を受けていた.英国には「ミディアム・ヒーラー養成機関」とでも呼ぶべき学校が数箇所あるのだが,私が通っていたのはそれと似たようなところだった.英国で訓練を受けたプロのミディアム/ヒーラーが中心となって指導・運営にあたっていた.しかし,夏のある出来事がきっかけで,私はそのスクールをみずから辞めることにした.夢で聞いた歌詞の 'good enough' は,これと関係があるらしいとわかった.'good enough' が意味するところは,'good enough to be independent' ではないか.スクールを離れて一人で続けていかれるだけの段階に達したのだ,と.
実は,スクールに通ううちに,様々な理由から辞めたいと思うようになっていた.講師や他の受講者と関わる中で(といっても,個人的な付き合いは全くなかったが)やり場のない怒りや悲しみを感じることが少しずつ増えていった.ただでさえ,苦しい時期が長く続き,自分の希望通りに物事が進むということは殆ど全く言っていいほどない状態にあり,更に新たな苦労が付け加わったという印象しかなかった.同時に,認定試験にパスするまでは辞められない,という思いもあった.辞めたいが辞められない,という葛藤を抱えながら通い続けた3年半の間には,相談業を生業とする人々(俗に「占い師」と呼ばれる)に相談することも多かった.資格取得を薦める意見もあったが,ひとりだけ,「資格を取らなくてもできるよ.あなたはそこには最後までいかない」と言う方がいた.この札幌の女性占い師は,霊視は殆ど利かないし,オーラも見えない人だったが,いわゆる「よく当たる占い師」で,彼女から言われたことで実現したことは少なくない.当時は疑う気持ちの方が強かったが,いま振り返ると,彼女の言った通りであったことがわかる.ほかの占い師・霊能者からは,リーディングの実践を積むように,とのアドバイスがあった.その時は力も自信もなく,実践の段階にはないと思っていたが,今まさに彼女らが指摘した通りの状況になっていることを考えれば,昨年の夏にスクールを辞めることも計画どおりだったのだと納得できる.
昨年9月,辞めるか否か決めかねて,霊媒のS氏に相談してみた.すると,このスクールに通い続けても上には上がれないこと,そこの男性講師(兼経営責任者)からは私が必要とする指導を受けられないこと,ひとりで続けることが必要,といった情報が伝えられた.決断を最も強く促したのは,この男性講師が,私との縁を切りたいが立場上自分からそう切り出すことができず,対応を決めかねている,という情報だった.実際,秋のクラスも継続するつもりで申し込んでいたが,夏に起こったある問題が原因で許可を待つように言われていた.この情報を得て,自ら去る決心がついた.ガイドからは「耐えなさい」というアドバイスもあり,やめるのがベストな選択だと思った.
これ以前に,2名のミディアム(うち1名は元講師・ミディアムだった)から,当該スクールに関する不評を聞いたことがあった.そこに通い続けていても力はつかない,というのだ.S氏や札幌の占い師なども「基礎を学ぶ場所」と言われていた.別々に与えられた一見ばらばらの情報が,パズルのピースのようにつながって現実と符合する.
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話は少し逸れるが,私がリーディングを始めたのは2011年4月.インスピレーションに従って決めた.スクールの瞑想中にも,ガイドからリーディングの練習をするようにと言われていて,そのように講師に伝えていた.が,春のクラスが終わる7月半ばまで,講師から認められることはなかった.同スクールでは,講師は案内役にすぎないとし,各自が,各自のスピリット・ガイドとつながり,ガイドの指導に従って行動できるようになることを目標として掲げているにも関わらず.3,4年前,スクールに在籍していたある女性ミディアム(『奇蹟を呼ぶ十人』でも紹介されている方)に受けたリーディングでは,私が自分を表現しないことによって「損をしている」ので,「もっと自分を表現しなさい」という趣旨のメッセージを得ていた.その時は何のことかよくわからなかった.「損」をしている,などというのは怪しい,と思った.なぜなら,物質世界に生きない彼らは,「損得」といった人間臭いことを言うはずがないから.クラスのことを言っていたらしい,とわかったのは,またしてもしばらく経ってからである.何かを感じても自信なさそうな様子でいたり,きちんと発言しなかったために,講師から正当な評価を受けられないでいたようだ.それによって,下手をすれば霊界の計画も狂いかねなかったため,つまり,私がいつごろ,どのような形で霊能を開花させるか,といったことは予めほぼ決まっていて,その通りに進まないと霊界サイドの全体的な計画も狂いかねないために,そうした表現で伝えてきたのかもしれない.
ひとりの人間の人生から,さらに大きな地球規模の出来事に至るまで,多くの事象は計画に従って起こったり,起こらないでいる.ものごとには時機があり,出来事はベスト・タイミングで起こる.中でも,全体に大きく影響を及ぼす出来事は必ずや遂行されることになっており,そうでないものに関しては本人次第というところがあるようだ.全体に関わる出来事を無事遂行させるために,その障害や妨害の芽は必ず摘み取られる.彼らは,要所要所でわれわれに危険信号を送り,警報を発令して知らせようとするが,それは私たちには,往々にして,ショックな出来事とか,想定外の事態といった形で経験される.将来,ミディアムとして,また,スピリチュアリズムに立脚した何らかの社会的活動をするらしい.国境・人種の垣根を越えて人々の役に立つことを,今回の人生では決めてきたようである.
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スピリット・ガイドは,私たちに理解できるように,最もふさわしい形や手段を選んでメッセージを送ってくる.それは夢であったり,誰かの口から出た言葉や,ふと目にした文字や絵であったり,非常に多岐にわたる.たとえすぐにはわからなくても,必ずベスト・タイミングで意味は解明できる.昨年5月の時点では,シンディー・ローパーさんのその曲が最も簡潔でインパクトがあり,且つ,それを夢で伝えるのがよい,と彼らは判断したのだろう.その本当の意味が半年以上あとに理解されることまでも見通したうえで.
スピリット・ガイドの導き・采配には驚きと感謝しかない。