単なる困難というわけではない.何をどうしたらよいのか見当もつかない.前に進むことも後に退くこともできず,立ち止まることもできない.そんな時は,魂として,初めてのステップにさしかかっている時かもしれません.
容易に乗り越えることのできる壁と,乗り越えられない壁の違いは,それだけで意味があるのです.かつて過去生の経験で到達できたところまでは,人はそれといった苦労なく上がってゆくものです.魂の力とはそういうものだからです.
けれども,それ以降,そこから先は,その魂にとって「道なき道」となるのです.過去生にも一度も取組んだことのない,未経験の道のりです.
それは,簡単には乗り越えることはむずかしい,けれども同時に,どうしても取り組まなければならない,人生をかけた願いでもあるのです.
自分ではどうにもならないような状況につき当たったとき,私たちはそのことを思い起こしてみる必要があるでしょう.今,自分の魂が初めての試練にさらされているのだと受けとめることです.そして,「道なき地点」に立って,そこから新たに道をつけてゆくことが,私たち一人ひとりの人生の醍醐味であるという気概をもって,いつも人生の難所に向かい合っていたいと思うのです.
何も頼りとするもののない地点に立つことを,私たちはただ恐れてはならないのです.そのときこそ,新しい人生の扉を開き,次なる段階へと歩を進めるチャンスに他なりません.
今取り組んでいる問題は,現実的に具体的に解決してゆかなければならないことであると同時に,永遠の問題,私たちの魂が永遠の眺めの中で,はじめて解決できる問題を含んでいるのです.
その問題を解決するということは,私たちに小さな満足を与えるに止まるものではなく,魂の願いを果たすことになるのです.それはいく転生もかけて,一段一段踏みしめてきた「人生の階段」を新たに切り拓くことなのです.
この人生に生まれてきた意味は,まさにそこにあります.「道なき地点」に立ったときに初めて,本当の人生が始まる―.私たちは誰もが道なき地点に立つ為に生まれてきた魂の挑戦者であり,冒険者です.
高橋佳子 『人間の絆 自業編』 pp. 247-49.
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